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天辰家の猫 リアムのひとりごと * その 11

先月に続いて、今月もご主人様とレコードの山の奇妙な関係(!?)について --。

仕事柄、レコードやCDが多いのは仕方がない。というか、大事な商売道具なのだから、多いのは当たり前だ。

もともとご主人様は、「物持ちがいい」と人から言われる。今日、履いていた靴だって15年以上も前に買ったものだし、お気に入りのコートは20年くらい着続けている。車も10年近く乗り続けているし、ステレオアンプは軽く30年は経つ。新しく何かを手に入れる時、すぐに飛びつくことはないけれど、いったん手に入れたもの、好きになったものは長く愛用している。

ぼくの家の倉庫は、ご主人様が30年以上にわたって手に入れたレコードたちでびっしりだ。めったに聴くことはなくなったレコード。今みたいに簡単ではなかった海外からの通販で、こつこつと買い揃えた愛着のあるレコード。旅先で大量に買い込み、船便で送ってもらったレコード。どんなものが届くか、届くまでの数週間、わくわくと待っていた。

たまった数は3万枚。そういったレコードを捨てる、なんてことはまず無理だ。資料で聴くCD類は先方から送られてくるものがほとんどだが、それにしても、聴かなくなったからといって処分できない。時々、ダンボール箱にまとめて返却しているみたいだけど、その数は知れていてなかなか減ってくれない。

この家に引っ越してきた当初、真新しい仕事部屋にはまだ資料も少なく整然としていた。でもご主人様は「なんか落ち着かないんだよな」と借りてきた猫みたいだった。気づくと、倉庫に置いてきたはずのレコードやCDが少しずつ運び込まれ、たくさんあったスペースはなくなった。大好きな愛着のあるものに囲まれて、自分の居場所をようやくみつけられるくらい・・・がちょうどいいらしい。

「あまり増やすと、重みで床が抜けますよ」と冗談で言われそうだけど、実は昔、仕事部屋の床が本当に歪んでしまったことがあるんだ。

その時はコンクリで土台を作り直す突貫工事でなんとかした。でも今はマンションなので、万が一、床が抜けるなんてことになったら・・・!

長年の愛着がこもったレコードの山たちの重みが、いったいどれくらいなのか、考えただけで怖くなるのでやめておこう。
(2005. 3)